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『 朝からどんよりとした天気で、勉強会の会場に到着した途端に雨が降り出し、あいにくのお天気ですねと、会場に集まった皆様とお話しておりましたが、この雨のおかげで仕事が中断し、参加できた方もいて、恵みの雨ではないか!と思うこともできる天候でありました。
 さて、本日は、天候の加減もあってか、参加者は8名と少なく、その分、思いもかけない名刀を、時間を掛けてゆっくりと鑑賞でき、非常に有意義な一日でした。
本日のお題は『肥後拵え』です。
まず、肥後拵えの典型作をお持ち頂き、その上、資料まで配布して、指導をして頂いた丹生さんに、厚く御礼申し上げます。m(__)m。
 さて、肥後拵えについては、詳しい書籍にありますので、肥後拵えについて学んだことで、特に印象に残ったことを書きたいと思います。一般に肥後拵えの柄巻きには『革』というイメージが強いものですが、これも、革巻きの柄の現存品が多いということであって、絹糸であっても良いとのこと。現存数が多いのは、革の方が絹糸よりも長持ちするということに起因することのようです。絹糸では、古いものでも江戸中期にまで遡るのがやっととのこと。永遠とはいかないようです。
 また、柄巻きの革でも、染めた革がありますが、肥後拵えの柄巻きの革は、燻革(くすべかわ)といって、鹿革を松や杉などで燻した(いぶした)ものを、つまみ巻きで巻き、絹糸で巻く場合は、つまみ巻きか諸捻巻きに巻くそうです。普通の革ではなかったのですね。初めて知りました。燻した革は、匂いがあるそうです。染めた革とは違って、そこで判別ができるようです。
それから、刀身にも外装にも言えることですが、写真とか展示では、表だけしか見えず、裏がわからず、知らないこともあるかと思いますが、肥後拵えで特徴的なのは、普通、小柄櫃の所にある『一文字』と言われる区切りのように見える『横に細長い木』がありますが、肥後拵えでは、小柄櫃がないのに、ちょうど栗型の裏に『一文字』が来るように出来ています。これも、本日、解説を頂いて初めて知りました。お持ち頂いた外装も、そのようになっており、実物を見ての解説は、とても、よくわかりました。
 また、鮫革を用いた鞘についての解説もありましたが、なんといっても、鮫革の強さについての解説には驚きました。
それは、いざという時には、鞘が武器になるほど『硬い』ということです。
しかも、擦れなどにもとても強く、見た目も美しく、その用いた知恵の素晴しさに感動と驚きを覚えました。
私は、鮫革の鞘というと、すぐに『海軍軍刀・短剣』を思い出しますので、加工の難しさなどを聞くなど、有意義なものとなりました。
 工作のことや、燻した革のことなど、三谷先生でなくてはわからいことが多数あり、私も盛んに質問をさせて頂きました次に、肥後拵え以外に、本日の刀剣鑑賞として、次の二振りの刀・短刀を拝見することができましたので、ご紹介致します。

刀銘 豊水東虎左行秀造之 明治三年八月日
短刀 無銘伝 長船長守(鞘書き 備前長船左近将監長守
の二振りで、いずれも、重要刀剣指定品です。
 行秀は、丹生さんに鑑定させられ、私がみたことのある行秀とは、随分と印象が違ったことと、さらに、とても新々刀に見えず、帽子が自然に尖り、地沸の細かさや地鉄のよくつんだ美しさから、大左と答えてしまいました。
この刀は、鵜の首造りで、長さ66.5センチで、この年記は、行秀の下限年記だそうです。
 う〜〜ん、ほんと、勉強になりました。
長守は、丹生さんが長義によく似ているとおっしゃっていましたが、乱れこみ突き上げて鋭く尖り、長く返る帽子は、まさしく長義の作風でした。
長さ21.4センチ、重ねも厚く、まったく、研ぎ減っていないように見えました。
とても大事に保存されてきたのでしょう。
江戸末期製作と思われる合口拵えも付いており、かわいい小柄と共に、印象深いものでした。

     刀 豊水東虎左行秀造之 明治三年八月日                    短刀 無銘伝 長船長守
                                               (鞘書き 備前長船左近将監長守)


最後になりましたが、こういう刀や短刀を、さりげなくお持ち下さり、私達の目に触れさせて頂ける幸せを感謝しつつ、本日のレポートとさせて頂きます。

ありがとうございました。
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◇Awa
◇大戸井 美生 
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