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新春定例観賞会

二十四節気の大寒を翌日に控えた1月19日()、大西アオイ記念館に於いて定例鑑賞会が開催されました。
外は寒い日でしたが、会場内は熱気で暑いほどでした。今回、嬉しいことに男性2名、女性1名が讃岐支部会員の仲間入りをしました。 その新会員に村中支部長が、鑑賞マナー等の基礎知識と注意点を丁寧に指導していました。初心者講座と誌上鑑定は丹生理事が担当しました。


当日の鑑定刀は日刀保本部より石井彰先生が持参して頂いた以下の五本でした。


一号刀  刀 【銘】(金象嵌銘)助真

幅広く元先の差開かず、中切先。板目肌に杢交じり、乱れ映り立つ。丁子刃が華やかに乱れ、帽子は小さくのたれ先掃きかける。備前以外の札はありませんでした。 しかし相州彫りとも言われる「重ね彫り」に惑わされた人もいました。石井先生の話では「後彫りであろう」とのことでした。

二号刀  刀 【銘】住東叡山忍岡辺 長曽祢興里作 延宝二年六月吉祥日

身幅は元先の差が付き、中切先詰まる。鎬地の柾が顕著で、地鉄は地沸が良くつき、細かな地景が入る。 小のたれに小互の目の刃を焼き、匂い深く、沸出来、帽子は横手を焼き込み、直に小丸の典型的な「乕徹帽子」なので殆どの人が一の札で当りでした。

三号刀  刀  無銘  青江

身幅広く元先の差開かず、大切先。板目肌に杢交じり、乱れ映り立つ。中直刃に足・葉入る。典型的な南北朝スタイルなので、時代を外した札はありませんでした。 香川県には有名な名物「ニッカリ青江」があるので、殆どの人が一の札で当りでした。

四号刀  刀 【銘】肥前国備中大掾藤原正永 河内守藤原正広

身幅広く元先の差少し付き、中切先。小板目肌よく詰み、地沸厚くつき、地景細かに入る。 元を直ぐに焼き出し、互の目乱れに丁子刃風の刃・小互の目交じり、足・葉入り、飛焼があり、帽子は小丸に返る。この日一番の難物で、新刀の京都・大坂・肥前・新々刀と札が割れました。

五号刀  太刀 【銘】国安

総体に細身で元先に幅差が開き、小切先。大板目に板目・杢目・流れ肌を交えて肌立ち、地沸厚くつき、淡く写り立つ。小丁子乱れに小乱れ・小互の目交じり、足・葉入り、帽子は小丸で先掃きかける。 これも古伯耆、古備前、山城と札が割れましたが、「粟田口」と聞いて大半の人が驚きました。粟田口は「叩き詰めた」と言われる綺麗な地肌をイメージしていたからです。

石井先生が茎を公開して入札鑑定の解説をすると、新入会員も素晴らしい名刀を手にしたことに驚いていました。

三賞は

天位 大塚勝士

地位 小林昭等

人位 丹生寿男

でした。


さらに、鑑賞刀として支部会員が「讃州住宮本白龍子吉隆」を持参してくれました。これは「日本刀大鑑」よれば嘉永頃(1850)に讃岐で活躍した刀工のようです。 身幅広く、重ね厚く反りが浅く、寸法が延びていわゆる「勤王刀」と呼ばれるスタイルでした。

四国讃岐支部・初代支部長の川辺勝一氏(現・相談役)が、永年にわたり県の文化財保護に貢献した功績に対し、令和元年11月26日に栄誉ある地域文化功労者文部科学大臣表彰を受賞されたので、有志による祝賀会が別会場で開催されました。私達、支部会員も川辺相談役を見習って、日本の貴重な文化財である「日本刀」の素晴らしさを多くの人々に伝え、大事にするよう「名刀展」の解説員等で協力したいと思いました。

四国讃岐支部  丹生寿男