匠のわざ 柄巻について講演と実演

香川県立ミュージアムおいて企画展示された「刀〜尽きない魅力に迫る」にあわせ、去る11月19日、三谷修史氏(四国讃岐支部副支部長、無鑑査柄巻師)と、氏の下で柄巻の技を修得中の私は、平成23年度さぬきワークショップ匠のわざ「美術刀剣刀拵:柄巻のはなし・実演会」として、講演及び柄巻の実技を披露しました。












当日の参加者は香川県立ミュージアムへの一般応募者で、第一部「午前10時〜12時」が24名、第2部「午後1時30分〜3時30分」が22名でした。
  三谷氏の講演の内容はまず上古刀から新刀にいたるまでの刀剣の姿が時代の要請で変遷していくなかで柄形(つかなり)も変わってゆく形態を詳しく説明されました。












 続いて、柄巻に欠かせない鮫皮について奈良時代以降貴重な輸入品であったことを下級武士の年俸と鮫皮の価格を比較し、分かり易く説明しました。
 また、拵えを鑑賞する際、鮫皮の粒の大きさ、並び方を確認するだけでその刀剣の所有者の身分を推測できるとの話は大いに来場者の興味をそそりました。

このほか現代でも使われている刀剣用語、鞘の所では(反りが合わない)、目貫では、(目貫通り)の説明を刀と鞘を使い、柄巻のところでは(手ぐすねを引く)クスネ(薬煉)を柄って、柄糸を巻く時の糸の滑りを止めとなると、説明し参加者の興味引きました。
 
 最後には師匠の三谷氏の説明により、私が柄巻の技を実演しました。
ミュージアムの学芸員が私の上部からカメラをセットし、本来なら見えにくい柄巻の手元をアップしモニターで見えるよう配慮されたものでした。





師匠の説明を聴く参加者はなかなか見る機会のない柄巻の技に興味を抱いたのか、ざわつくこともなく静かに見守り、独特の緊張感が漂いました。柄糸を締めながら柄を巻いてゆく作業を進めるうち、師匠が「柄糸はきつく締めても手溜まりが良くなくてはいけない、そのために和紙をよくもみ小さく切ったものを柄糸の下にクジリで三角になるよう和紙を込めていきます」と解説した後、私に「糸をもどいて和紙が三角になっているかを見せなさい」と指示がありました。糸をもどすと、右側、左側共に和紙が物の見事に三角になっており、それをご覧になった参加者の皆さんは驚いて全員が拍手されました。柄糸にクスネを引き、柄糸を締めながら柄を巻いていく作業を進めるうち予定の時間となり無事実演を終了しました。
ご参加くださった皆様には、静かななかで気持ちのよい時間を過ごされましたことと存じます。

                                         はしもとゆきのり 四国讃岐支部会員