桜の花も半ば散り、日差しも暖かさを増した4月10日(日)、大西・アオイ記念館において、令和4年度総会及び鑑賞会を開催致しました。
コロナ禍の影響により、令和3年度総会以来の、実に1年ぶりの鑑賞会となり、出席者は14名と少数ではありましたが、久方ぶりにお会いでき、感慨深いものがありました。
午前10時から理事の方々による理事会、午前11時から会員を含めての総会を行いました。総会においては、まず令和3年度事業実施報告及び決算報告を行いました。続いて令和4年度事業計画及び収支予算の報告がありました。
昼食時間を挟み、午後1時からは本部より井本悠紀講師をお招きして、協会からお借りした五口の刀剣の鑑賞会と鑑定入札が行われました。支部に今回初めてお借りした一口もあるということで、とても楽しみに思いながら鑑賞させて頂きました。1時間以上じっくりと鑑賞した後、井本講師より一口ずつ丁寧に解説をして頂きました。
細身で腰反り深く、先に行って伏さる古様な太刀姿です。
板目の肌合が大きく肌立ち、地斑映りが立つ。小乱れ主体に刃肌に絡み、金筋・砂流など豊富な働きが目立つ野趣ある一口。
古備前の作ですが、古伯耆の作に通じるものがあり、ほとんどの方が古伯耆に札を入れていました。
身幅広めで腰反りついて、やや先反りつく姿です。
身幅に比して重ねが目立ち、厚い姿となる。板目に杢・流れ肌を交えて整わない地鉄に淡く映りが立つ。 刃文は焼低めに互の目・小互の目・小尖り刃・角張る刃など、多種類の刃を交えて総じて小詰む応永備前の直前の作になります。
刃文が低く、多種類の刃文が小詰んで密着しているのが小反派の特徴です。ほとんどの方が備前に入れていました。
身幅広めに元先の幅差が目立たず、輪反り状が浅めにつき、中鋒に結ぶ雄渾な姿です。
板目鍛えが肌立ちごころ、中直刃基調に小丁子・小乱れ調交え、しきりに足・葉入り、沸よくつき、部分的に焼頭上に雁股状の湯走りを見せて、淡く棟焼を交える。
刀全体が反っているような姿です。
身幅広く、寸延び、先反り浅くつく。板目に杢・流れ肌を交えて、肌立ち、処々地斑調の鉄を交え、刃寄り直ぐ状の映りが立ち、かな色黒味がかる。 刃文は直刃調にほつれなどの働きを見せ、沸がよくつき、部分的に荒めの沸づきとなり、帽子先小さく尖る。
大変難解な一口でした。正解に札を入れられた方はいませんでした。帽子のとがりなどが左文字に通じるものがあります。荒めの沸づきを「つぶらな沸」とも表現するそうです。
身幅広め、元先の幅差目立たず、反り浅く、中鋒延びる。 小板目肌つみ、地沸よくついて精良な鉄となる。 刃文はのたれを主体に互の目が交じり、足入り、沸よくついて部分的に帯状となり、帽子は浅くのたれ込み、先丸く返る。
「のたれを主体に互の目交じり」という点から、直江志津写しと思われます。肥前刀の特徴である両ちりが見られます。 この刀工の特徴は直刃の帯状ですが、それは忠広に改名した後に確立していきます。 この一口は忠吉の初期の作である為、その特徴は目立ちません。
鑑定刀は平安時代から江戸初期までの古刀四口と新刀一口でした。今回の鑑定入札は大変難しく、 いつもは一の札で殆どの鑑定刀を当ててしまう方でも苦戦なさっているようでした。
五号刀において、井本講師曰く「初代の、特に初期の作である」との解説に、個人的ではありますが「なるほど」と驚きと納得を致しました。 諸刀工が己の作風を確立するまでの期間というものがあるということ、言われてみれば当たり前のことでしかないのですが、 鑑定書の文字の羅列ばかりを意識していた自分に改めて気づいた瞬間でした。
鑑定入札の結果は次の通りです。
天位 大塚 勝士 氏
地位 丹生 寿男 氏
(※天位・地位 同点数)
人位 橋本 幸律 氏
また、役員の丹生氏のご厚意により、氏所有の刀1口と十手を併せて鑑賞させて頂きました。 十手の模造品の見分け方を教えて頂くなど、大変有意義な時間を過ごさせて頂きました。
未だコロナの明確な終息は見えてはおりませんが、このご時世にこのような貴重な場を設けて頂けたのは、本部の方をはじめ、多くの方のご尽力によるものです。 この場をお借りしまして、改めて感謝の意を述べたいと思います。これからもご指導よろしくお願い致します。
四国讃岐支部 富田佳世