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令和4年度 定例鑑賞会 (2023年1月)

梅が咲きはじめ春の日差しが感じられるも、肌寒い曇り空のもと、1月22日(日)大西・アオイ記念館にて、感染リスクを考え、午後から鑑賞鑑定会のみの開催となりました。今回は、協会より武田耕太郎講師をお迎えし、支部会員と入会希望者を含めて17名の方が出席されました。

鑑賞会では、武田講師が5振りを用意してくださり、入札鑑定後それぞれの刀の特徴を次のように説明していただきました。


壱号刀

重要美術品 古一文字「宗吉」。磨上だが細身で腰反りのある太刀。平安末から鎌倉初期の姿で、地鉄には乱れ映りが鎬筋を越えてみられ、刃文は長光を思わせるものでした。

弐号刀

重要刀剣 「長谷部国信」。平造り脇差。身幅が広く、寸が延び、重ねが薄いところから南北朝の作である。刃文が得意の皆焼で、棟寄りと刃寄りに板目肌が流れて柾がかっているところに特徴が表れている。見る度に新しい表情が見える刀で、じっくり鑑賞して欲しいとのことでした。これは、比較的正解が多かったものです。

参号刀

重要刀剣 「堀川広実」。姿からすると南北朝か慶長期に見られるものであるが、よく見ると水影の映りが見える。肌立ちザングリとして、処々尖り刃も見えるが、焼きの低い刃に沸よくつき、処々湯走り飛び焼きが見られる。焼き刃の匂い口が沈み、沸にむらがある。

四号刀

重要刀剣 無銘。古伯耆「貞綱」の極め。刃の焼き落とし、鍛えに刃が絡んでいる。やや黒ずむ。刃肌が立っているその刃肌に沿って金筋・砂流し等の働きが見えるところを見て欲しい。なぜこの刀を持参したかというと、茎に切付け銘があり金比羅さんにかかわる刀であることから、年始の会にお国帰りというわけで、この会で是非見てもらいたかった刀だったそうです。当てるのが難しいと思われたが、特徴をよく見て当てられる方がいた。

五号刀

重要刀剣 「南紀重国」の脇差。作風として平造り脇差の場合、重ねが厚く、反りが強くついている。特に彫り物が有名である。そして、棟に彫り師の名前まで彫ってある。しかし、この刀の本当のよさは地鉄のよさである。地沸も入っているが、地景もしっかりと入っており、彫り物がある前の状態が気になるほどの良い出来である。これも、為銘が入っている。もともと年紀作が少ない刀工なのだが、この時期にはそういった年紀物が集中している。位の高い人への献上品であったりとかして、いわゆる就職活動をしていたものと思われる。

資料から、60石でお抱え刀工となっていることがわかっている。そしてまた、寛永3年80石になる資料があり、頼信から4振りを将軍家に献上したところ、家光から誉められてるのも丁度この時期に当たる。もう一つの注目ポイントとして茎の棟銘「天下一」の称号が記銘されている。刀工は使わないこの称号は、広く一般の職人が使用したものであり、当時のようすを知る上で貴重な物である。


今回の成績上位者は次の方です。

天位  大塚 勝士 さん

地位  橋本 幸律 さん

人位  矢野 茂雄 さん

入札鑑定では武田先生より、入札に参加される会員の参加者数が多いのと、平均点が高いというお褒めの言葉もいただきました。協会をはじめ支部の皆様には、引き続きご指導、ご助言賜りますようお願い申し上げます。

四国讃岐支部 吉田良三

日本美術刀剣保存協会四国讃岐支部
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